憲法調査会での意見陳述(9条について)[2005.03.03]
憲法調査会「意見陳述」 参議院議員 荒木清寛
憲法改正問題の最大の焦点である9条について、私見を述べます。
私は昭和50年に法学部に入学し、すぐに法の建前と現実の大きな隔たりに直面しました。
その最大のものが、憲法9条の問題です。憲法学界の多数説が自衛隊は明らかに憲法違反であると論じている一方で、その自衛隊の存在により日本が守られているとの現実でした。また最高裁は、砂川事件を巡って9条と日米安保の問題について、おそらくは現実の安保体制を尊重せざるをえないとの判断からか、正面からの法解釈をすることを回避していました。これでは国の最高法規が、裁判規範として機能しているのか、疑問です。
9条に関して政府がこれまで積み重ねてきた見解は、国の安保・防衛政策から乖離した憲法の理念を解釈で取り繕うという手法であったことを、否定できません。本調査会で大沼保昭参考人は、「余りにも無理な政府の憲法解釈が重なって、国家の根本法に対する国民のシニシズムを生じせしめている、そういう危険領域に今日憲法は入っている」と述べていますが、極めて正当です。
一方で9条の改正にあたっては、政府の解釈を前提としても、この条項が大きな歴史的役割を果たしてきたこと評価すべきです。平和主義のメッセージは、軍国主義が復活するのではないかとのアジア諸国の日本に対する懸念を払拭しましたし、わが国は防衛費の増額を抑え経済的繁栄を果たしました。
したがって私は、9条1項の戦争放棄、2項の戦力不保持の規定を堅持するという姿勢に立った上で、自衛隊の存在を明記し、国際貢献のあり方についての根拠規定を加えるべきだと考えます。いわゆる「加憲」の主張です。
問題は集団的自衛権の扱いです。これを認めることが日米安保体制の質を高めることになるとの議論には、一定の説得力があります。しかしわが国の領域内で起きたことであれば、個別的自衛権を根拠として対応できるのではないでしょうか。また、諸国は第2次大戦後「集団的自衛権」の名の下にその国際的合法性・正当性が疑わしい種々の行為に従事してきた歴史的事実を、十分に考慮する必要があると思われます。
次に、わが国の国際的責任をふまえれば、武力行使を伴わない国連の平和維持活動に積極的に参加をすべきと書き加えるのは当然です。
さらに、侵略や人道法の大規模な侵害を阻止・鎮圧する国連の軍事行動には、それが武力を伴うものであってもできるだけわが国は参加すべきであるとの主張もあります。傾聴に値します。しかし、軍事的安全保障における集団主義は、現実の国際社会で普遍的なものとなっているわけではありません。現に国連憲章42条等に基づく軍事的措置、いわゆる国連軍はいまだ設けられたことはなく、これらの制度はいまや有名無実になったとまでいわれています。 この点は、慎重であるべきだと考えます。
最後に、今後も現行憲法を評価しつつ、バランスのとれた憲法議論を行うことを申し述べて、私の意見陳述とします。