外交官合同葬に参列して [2003.12.06]
イラクで殉職した奥克彦大使と井ノ上正盛1等書記官の合同葬に、参列しました。
小泉総理の哀悼の言葉や、二人の外交官の同期生らの弔辞を、涙なくして聞くことを誰ができたでしょうか。
私は、外務総括政務次官また副大臣を務めた短い期間の中で、奥克彦さんには強烈な印象を持っています。志が高く、潔癖な人物でした。
ある時私が「キャリヤーとノンキャリヤーの職員の間に、越えがたい壁があるように思う。」と発言したことに対して、奥さんは「そんなことはないはずです。」と誠に不本意であるとの表情で反論をしました。祭壇に、奥大使と井ノ上1等書記官の遺影が並べられているのを見て、申し訳ないことを述べたと後悔しました。奥さんにそのような狭量な考があるはずもなく、有していたのは外交官として日本の国益を増進するとの強い使命感だけであったと感じます。
「困難の中に身を置いてこそ人間は鍛えられる」というのが奥さんの口癖であったとのこと。その言葉のままに生きた、生涯でした。
合同葬が始まる前のこと。状況が理解できない井ノ上1等書記官の2才の長男が、柩に駆け寄ろうとするのを母親が制止し、その子の泣き声が静寂の中に響き渡りました。
私も実母をなくし、その時弟は2才でした。遺児の境遇が、よく分かります。長じて悲しみが込み上げてくるもの。周囲の暖かさの中に、逞しく育つことを祈ります。
わが国がイラクの復興から手を引くべしと主張するのは、簡単なことです。しかしそれでは亡くなった二人の遺志を引き継ぐことにはなりません。彼らは、窮状にあるイラク国民に救援の手を今差し伸べることが、日本とイラクの将来にわたる固い絆を結ぶことになると信じて、困難を顧みずに戦ったのです。
私は、政府の姿勢に批判をも有しています。しかしわが国要員の安全を確保しながら、イラクの人道復興支援に尽力するその方策を真剣に模索することが、あるべき外交であると確信しています。